スージー鈴木音楽評論家、ラジオDJ、小説家
懐かしの「NHK紅白歌合戦〜第20回」(リマスター版) 番組サイトより
1969年に放送された第20回「NHK紅白歌合戦」が再放送される。NHK総合テレビで2月11日(火)15時5分から。ビデオレストア技術によって、4K同等のクオリティーになったリマスター版とのこと。昨年12月に放送された71年紅白の再放送も発見が多かったが、69年版の再放送をかつて録画して何度も丹念に見てきた立場から、今回はさらに見ごたえのある回だと断言できる。見どころは、何といっても3人の女性シンガー(と当時のファッションとトリのあの人)!
ココがポイント
NHKは、1969年に放送された「NHK紅白歌合戦~第20回」をまるごと再放送する。
カルメン・マキ『時には母のない子のように』
いしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』
弘田三枝子『人形の家』
エキスパートの補足・見解
大阪万博が賑々しく開催される1970年を明日に控えた1969年紅白。かつて再放送されたのを録画して何度も見ていますが、いかにも高度経済成長期の只中という感じの独特の高揚感の中、女性シンガーのはつらつとした姿が印象的な回でした。
おすすめは3人。まずはこの年の新宿の重々しい空気を会場に持ち込んだカルメン・マキ『時には母のない子のように』。バックでギターを弾く2人が誰かにも注目。また朝ドラ『てるてる家族』でも引用された、初出場・いしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』のキラキラした美しさにはほれぼれします。宮田輝の曲紹介もいい。歌唱力でいえば、弘田三枝子『人形の家』の朗々としたパワーボーカルを推します。
また弱冠21歳の森山良子と、応援合戦で颯爽としたダンスを見せる金井克子のミニスカート姿は時代のファッションモードを象徴しています。
ですが、この時期の紅白を全部持っていくのは、もちろん美空ひばり。トリの『別れてもありがとう』での、井上大輔(当時:忠夫)によるエロい(褒め言葉)テナーサックスと絡み合いながらの圧倒的なボーカルは、視聴者に「あぁ、今年も結局お嬢だったわね」と思わせたことでしょう。
音楽評論家、ラジオDJ、小説家
音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年東大阪市生まれ。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』、BAYFM『9の音粋』月曜日に出演中。著書に『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)、『幸福な退職』『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、東京スポーツなどで連載中。2024年11月に新刊『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)発売。